AEのインジケータ周りの理解

みなさんはダイナミックリンク、使ってますか?今はそうでもなさそうですが、初期のダイナミックリンクには不具合が多かったので、いまだにぼくは使ってないんですよねえ…。なので、AEとPremiereの連携といえば、Premiere→AEはプレミアのタイムラインに並んでる素材をコピー&AEでペースト、AE→Premiereは普通に書き出して置く、っていうのをいまだにやってる老害クリエイター状態ですね!

それはそれとして、そのようにAEとPremiereのタイムラインを行き来したとき、「あれ?AEコンポジションの最後にインジケータを置いたときと、書き出した動画をPremiereのタイムラインに乗せて、そのケツにインジケータをスナップさせたときで、タイムコードが1フレーム違うぞ?」となることはありませんか?

トラップ1「AEとPremiereで尺が違うように見えるんだけども?」

これはいったいなぜなのでしょうか?その謎を解明しつつ、“インジケータが差し示すモノ”を理解していきましょうかね。

まずは下の図を見てください。

左がAEとかPremiereが採用しているインジケータの表現、右が昔懐かしいFlashや今のAnimateが採用している表現です。
まず前提として、タイムラインの帯は横幅がある“範囲”を1単位として、それを右方向へ並べることで時間軸を表現しています。
それではインジケータのほうを見ていきましょう。右のインジケータ表現だと、インジケータにも横幅を持たせて“今どの絵を見せているか”がわかりやすくなっています。それに対し、左の表現はインジケータが“線”なので、感覚としては「ん?絵を指しているっていうより、そのあいだの隙間を指してるじゃん」となりますね。しかしまあ、編集ソフトの慣例的なルールとして『線の右側にある絵を指し示している』ことに(いつのころからか)なっているので、インジケータは線の右側の絵を指しています。

なぜAdobeがこのインジケータ表現を採用しているのかは不明です。(そっちのほうが線が細くてカッコいいからでしょうかね?UIのカッコよさは編集者のやる気に関連しないとも言えないので、あるやもです。もしくは、Adobeが採用する前に慣例としてすでにそういう共通認識があったのか…まあ、情報はとくになく、不明です)

で、これを理解すれば、一番最初の疑問は解決します。
よくよく考えてみれば、Premiereのクリップのケツにインジケータをスナップさせたとき、インジケータが指し示しているのはどこでしょうか?そうです、クリップの最後はインジケータの“左”にあるのでそれを指してはおらず、その次フレームの動画がない場所を差し示しているんですねえ。

それに対して、AEコンポ内のインジケータは最後まで行かずにその手前で止まる仕様となっています。

結果、1フレームズレた場所を差し示しているのに「同じ一番後ろを参照しているはずなのに、タイムコードだとPremiereのほうが1多い」と錯覚してしまうんですね。つまり動画の長さは一緒、ってことです。わかってしまえばなんてことはないんですが、案外ハマる人も多いかと思います。

ついでに、タイムコード周りでハマりやすいトラップを2種類紹介したいと思います。

トラップ2「コンポジション設定でちゃんと切りのいい尺にしたのに、最後のフレームが○○;29とかなんだけど?」

これは編集ソフトを使い始めのときに遭遇する疑問でしょう。この答えはなんとも簡単です。

編集ソフトは(デフォルトでは)0フレームから始まります。そして、0フレームを見てみると、絵が“ある”のです。タイムラインにはゼロ地点から絵を置いていくっていうことですね。
それに対し、尺の指定はフレームが何個あるかを指定します。絵1個分ならば1フレーム、10個分ならば10フレームですね。
…そうなんです。タイムラインはゼロ始まりなのに、尺指定は1始まりなので、数が1つズレるんですよね。

例えば、コンポジションの長さを“10フレーム”に設定した場合は、タイムラインは0~9の10個に分割されるということです。(0~9を数えてみればわかりますが、10個ありますねえ)

だから、例えばコンポジションの尺を05;00にした場合には、最後のフレームにインジケータを置くと04;29とか出るわけですね(29.97fpsや30fpsの場合)。

トラップ3「1;00;00のところにインジケータを持ってきたら1;00;02になるんだけど?」

これが起こるのは『フレームレートが小数点あり』かつ『ドロップフレーム』の場合です。AEをそれなりに使ってきた人もなるべく避けてきた『29.97fpsと30fpsの違い』とか『ドロップ、ノンドロップフレームの違い』とかの話ですね…。

正直なところ、TVの仕事だったら29.97fpsのドロップフレームで作業すればいいし、それ以外ならば何でもいい、くらいの認識で済んだりします。あとは「○分ジャスト付近はフレーム数が飛ぶなあ」くらいの認識であれば事足りますね(アニメの現場だと尺管理が厳密なのでそうもいかないのかもです…)。
あ、あとは、エクスプレッションに関して、29.97fpsなどの小数点ありのフレームレートにすると、1秒の場所の“time”の値が『1』ではなく『1.001001001001001』とかになるので注意しましょう(ドロップ、ノンドロップフレームは関係ないです)。

ぼくもここら辺の理解はなんとな~くだったんですが、記事を書くに当たってちょっと本腰を入れて理解してみたので、説明を試みようかと思います!興味のある方は読み進めて下さいね。

29.97fpsとドロップフレームを説明してみる。

まず、29.97fpsについて感覚的に理解しようとするとこうなるかと思います。
「30fpsが1秒に30コマで、24fpsが1秒に24コマだろ?…ってことは29.97fpsは1秒に29.97コマか。まあ、30コマよりちょっとコマ数が減ったってことだろ」って感じですね。

しかし、これだと理解したことにならないんですね…。
理解のカギはその歴史にあります。白黒テレビからカラーテレビになったとき、色情報も電波に乗せたら30fpsのはずがちょっとずつズレて遅れ、尺が伸びてしまった。それをなんとかしたのがドロップフレームだ、という歴史ですね。
つまり「ほんとは1秒30コマにしたい気持ちはある」というのがカギです。
それを前提として考えれば、ほんとは1秒に30コマ入れたいんだけど、29.97コマしか入らない(つまり、残りの0.03コマ=“テレビ画面下のほんのちょっとの部分”の描画は1秒以降に持ち越されるし、その「ほんのちょっと持ち越される」が塵も積もってだいぶ尺が伸びてしまう)のが問題ってことです。
29.97fpsとドロップフレームのうち、29.97fpsは何かしらの問題の『解決策』ではなくて、『それが問題点』なんですねえ。

で、その『29.97fps』という「30fpsのつもりで運用すると尺が伸びちゃう」フレームレートをどうしたら30fpsっぽくできるのか…その解決策が『ドロップフレーム』なんですねえ。

ドロップフレームはこういうコンセプトです。
「ちょっと尺が伸びるなら、帳尻があうようにコマ数を減らせばよくね?」
なんとも単純明快ですねえ。と、ここで勘違いしがちなのは、別に、撮った素材から何コマか抜くってことではないです。例えるならば、「物差しの目盛りの幅が元の目盛りよりほんのちょっとずつ広くなっちゃったなあ…じゃあ、広くなる前の物差しの目盛りとちょうど合うとこで、その元の目盛りの数値に書き換えちゃおうぜ…まあそうすると数字が飛んじゃうけどいいだろ」ってことです。
コマ数を減らすっていうのはあくまで目盛りの字の話です。つまり、「ちょっと30fpsとは言えない目盛りで、正確に30fpsを測れないっつーか伸びちゃうんすけど、ここに来たら30fpsでいうとこの○○って数になるのは確かなんで、それを書いといて帳尻合わせました。それでいいっすよね」というルールです。
なので、そういうルールの下で撮った、つまり29.97fpsで撮った映像を29.97fpsドロップフレームのタイムラインに乗せれば、徐々にズレはするが定期的に帳尻を合わせてくれる時間表示となります。

気を付けてほしいのは、このような小数点ありfps&ドロップフレームの場合、タイムコード(タイムラインパネルの左上にある時間表示)はアバウトな目安の数値になることに注意してください。これは、1秒29.97コマのはずなのにインジケータを0のところから30回(30コマ)移動させたら1;00と表示されることからわかります。まあしかし、タイムコード上でいちいち正確に「ここは1.001001001001001;00」と表示されても困りますしね…。

そしてノンドロップフレームですが、これは帳尻合わせを行わないということです。これは、目盛りがちょっと幅広のまま突き進んでるわけで、こちらはタイムコードの表示が実際の世界の時間間隔とズレたまま数字が積み重なっていきます。
その証拠に、試しに(それなりの長さの)29.97fpsノンドロップフレームのコンポを30fpsのコンポに入れると、そのコンポレイヤーは29.97fpsノンドロップフレームのコンポで表示されている時間よりも尺が長くなります。というか30fpsのコンポ内で表示されているほうが、実際の世界の時間間隔の尺です。

どうでしょうか?まあ~やっぱりややこしいですよねえ。地デジに移行するときにTVもちょっきり30fpsにならんかったんですかねえ…。なんか、ダメだったんでしょうね…。fpsの話とカラーマネージメントの話は、映像系の仕事をしてる人でも話がかみ合わなかったりします。カラーマネージメントともなると、ディスプレイの話なのか、アプリケーション内の話なのか、実際に閲覧するTVやらプレイヤーの話なのか、ほんとに複雑ですよね。
そういう知識系の覚えることがどんどん少なくなって、カッコいいものを作ることに注力できる世の中にならんもんか、というのが全クリエイターの本音かと思います。
fpsの話も、業界によっては覚えなくていいこともありますが、一応、参考にして下さい!

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