仰々しいタイトルですが「各パーツをどんな動きにすればカッコよく見えるのか」のコツを書き連ねていこうかと思います。
ネットを調べてみると、AEに関しては作例のTipsは多々あり、デザインに関してはレイアウトとか静止状態の原則は載ってるんですが、動きに関してのコツはあんまりないのでぜひともご覧ください!
基本的な考え方 『視線誘導』に着目しよう。
モーショングラフィックスを作る人間は、視聴者の何に気を付ければいいのでしょう?
それが『視線誘導』です。マンガに関する考察とかでよく出てくるアレですね。マンガだと、読者がスムーズに左上から右下へ視線を移動できるよう、登場人物の向きやフキダシの位置をその方向にそって配置する、ってやつです。
映画にも『視線誘導』はあります。イマジナリーラインと言って、2人の登場人物の立ち位置を点として仮想の線を引いたとき、一度その線のどちらかで撮ったならば、線を越えて撮ったカットをつないではならない、というものです。こうすることで、各登場人物の画面上の向きが変わらないので、観客はカットごとに視線をスムーズに移動できる、というワケです。(説明されている効果としては『向きが変わらないことで位置関係の把握がしやすい』となっており『視線のスムーズな移動』という効果はぼくの独自解釈ですけども)
このように、色々なエンタメ媒体で視線誘導は重視されています。じゃあモーショングラフィックスもそうしたらいいじゃないか、ということですね。モーショングラフィックス制作者は、「視聴者は今、画面のどこを見ているだろうか」ということに気を付けましょう。
「いや、そりゃそうすれば“わかりやすく”はなるだろうけど、かっこよくなります?」という疑問を持つかと思います。ゆっく~りした動きのアニメーションを作って「視線誘導をしました」と言われても「カッコよくはねえなあ」ということですね。まずは前提として『視線誘導』でわかりやすくすることを心掛けつつ、続いて、同じ『視線、目の動き』に注目した、カッコよくするコツを書いていきます。
コツ0 等速はダサい。
スピードが速いものはカッコいいですよね。たとえば「F1はカッコいいし、映画のカーチェイスは心おどる」みたいな単純なことです。それがどう『等速はダサい』とつながるのかと言いますと、まずは等速の“遅い”動きは視聴者が「ああ、ここまで動くんだろうなあ」と思ってしまってから到着まで、なんの変化もないので効果的ではないです。そして等速の“速い”動きはカッコいいですが『視線誘導』の観点からすると速すぎて見やすくない。
ならば「速い動きと視線誘導を両立するためにはどうしたらいいのか」、その答えが『イージング』です。
イージングとは、移動中に速度が変わる“グイーン”という動きですね。視聴者は“グイーン”の”グ”の部分で、「あ、こっちに行くんだな」という準備&予想ができ、そこから“イーン”の速い動き自体に魅了される、ということです。
具体的なやり方は以下の通り。
キーフレームを打って、選択し、F9を押す。
イージング具合を調整したい場合はグラフエディタを出してハンドルを調整。
オススメ設定はキーフレームを2つともF9を押して、2つ目だけハンドルを1つ目側に伸ばせるだけ伸ばす。
(1つ目の速度が33.33、2つ目が100になります)
スクリプト“EaseSwinger”だと一括でできますよ(宣伝)。
コツ1 同じ方向に動いてさえいれば、つながって見える。
多様なエンタメ媒体で視線誘導が重視されていることは前述しました。その前提を考えてみると、どうやら「視聴者は視線をスムーズにつながるようにしてほしいと思っている」ようです。そこから「もしかして、視線がスムーズになってさえいれば、案外何をやってもいいんじゃないか?」という仮説が成り立ちますね。そこで、スムーズな移動中にモノを入れ替えてみましょう。
どうでしょうか。カットつなぎしただけなのに、自然に見えますね。検証の結果、以下のことがわかりました。
「視線がスムーズになっている=画面内のモノが同方向に動いているならば、変形せずともつなげることができる」ってことですね。
コツ2 視線をわざと混乱させ、なんかすごいことが起こっている感を出す。
人間、情報量が多すぎると混乱するものです。そして情報過多のまま進んで、そのまま終わってしまえばそれはストレスになります。しかし情報が収束したならば「ああ、最終的にはなんとなく分かった!」と逆に快感に感じるものですね。ミステリー小説やどんでん返し映画と同じ手法です。(伏線のいくつかが最終的にもなんだったか分からなくても、得られた快感が上回れば視聴者は案外気にしないもんですよね)
バンドをやってたりして、音楽理論をちょっとかじったことがあるという人ならば、ケーデンスの考え方にも近いと言えるでしょう。7つの和音を安定(トニック)、中間(サブドミナント)、不安定(ドミナント)に分類し、曲の途中でドミナント和音を使って不安定にさせ「安定してほしい!」と観客に思わせてからトニックで安定させる、という理論です。(偶然にも、これをドミナント“モーション”と言いますね)
これをモーショングラフィックスに当てはめると「視線誘導を一時的に混乱させることは悪ではない」ってことですね。これを多用したのがかの有名な映画OPデザイナーのカイルクーパー(映画『セブン』や『ウォーキングデッド』etc)です。
カイルクーパーの作る映像は、無作為にいろんななモノを観せているように見えますが、観察してみると案外、動いているのは次にくるテキストだったりします。つまり、最終的には「ああ、せわしなく動いてたのはコレか」とわかるので快感となる、ってことですね。
(コツ2の話ではないですが、テキストを長めに見せて、次カットではちょうどその箇所に、次の映像の見てほしいところを配置してたりするんですよね。ガチャガチャしてるけど観やすい=“カッコいい”&”視線誘導”の両立ができてるのがカイルクーパーの真骨頂だと思います)。
このコツをまとめると「場面転換のときには、次にちゃんとキメのレイアウトでわかりやすく情報を与えるならば、にぎやかしパーツをたくさん入れても問題ない」「にぎやかしパーツは次のキメレイアウトと関連していたほうがいいが、関連してなくてもまあ大丈夫」ということです。
コツを全部載せしてみる。
さて、ではコツ1と2を組み合わせると、どのようなことができるでしょうか?
画面全体をおおうようなにぎやかしパーツを出現させて一時的に視線を混乱させはするが、そのにぎやかしパーツとメインパーツを同方向へアニメーションさせて視線誘導を行えば、「なにかすごいことが起こっているような気がしたが、視線自体はスムーズにつながるので疲れない」モーションを作ることができますね!
スローを見てもらえればわかるとおり、メインパーツと背景はただのカットつなぎです。にぎやかしパーツが一番速く動いているときに切り替えれば、変形させずともよいわけですね。
また、にぎやかしのトランジションがいったん全てを隠しているわけではないことに注目してください。これは実は大きなポイントです。にぎやかしパーツの下に一部見えているメインパーツや背景は「わざとカットつなぎを見せる」ことで、より「なんかすごいことが起こっている」錯覚を生むことができるのです。
如何でしょうか?これらのコツを知っておけば、キメとキメのあいだのモーションをシンプルにも複雑にも、いかようにもできますね!カットつなぎで簡単に“すごいことやってる感”を出せ、にぎやかしパーツの使いどころもわかるので、オススメです!
補足 にぎやかしパーツの入れどころ、またそのモーション。
そういえば、にぎやかしパーツは“視線のかく乱”専用ってわけでもないので、補足します。
■出現、消失、移動などの軌跡パーツ
これらはメインパーツにも使えます。
■背景パーティクル
これは”視線のかく乱”というより、揺れる木の葉のような自然界を思わせる動きでクオリティを上げるためのものです。
パーティクルのスピードが速い場合、メインパーツが見にくくなります。そのときはパーティクルとメインパーツのあいだに丸くマスクした背景を乗せるなりで、メインパーツとパーティクルがかぶらないようにしましょう(時と場合によります)
以上です!これで多分過不足ないかなあと思います。
パーツの分類
最後にモーションに関するパーツの分類を書いておきますので、ご参考ください!
■メインパーツ
写真(人物、商品等)、アイコン、テキスト。
■にぎやかしパーツ
パーティクル(図形、写真等)、軌跡(出現、消失、移動等)、トランジション、グリッチ(一部拡大、明るさ変更、ノイズ、+や×マーク)、メインパーツのコピー(不透明度を下げたり、拡大したもの)、テキスト(MVなら歌詞の一部やキーワード、デジタル的なものであればコード文等)。
■背景
写真(風景等)、グラデーション、図形(幾何学模様を含む)。
それぞれのパーツはアニメーションの中で役割が変わったりします。
例えば、パーティクルの一部かと思ったらそれにズームし、メインパーツに変化するとか、
メインパーツが変化してトランジションに変わるとかですね。
ん……こっちもまた別の原則っぽいですね……まあ、合わせてご参考ください!